日本医療大学学園コラム|高齢者福祉3原則・その1「継続性」

日本医療大学|アンデルセン便り

08月01日

高齢者福祉3原則・その1「継続性」

 今年の日本はなかなか暑いですね。デンマークは夏でも30度を越える日はあまりなく、北海道東部あたりの気候と似ていると言われます。ただし、湿度はほとんどなく、日陰に入れば涼しいです。
 さて、今回からは、デンマークの高齢者福祉3原則についてお話します。3原則は以下のとおり。

1.継続性
2.自己決定
3.自己資源の活用

 この3原則は、1982年にデンマーク政府内に設けられた高齢者福祉審議会の答申で打ち出されました。増大する高齢者福祉の支出を抑え、かつ質を落とさないためにはどうするかという狙いがありました。
 まず「継続性」とは、「可能な限り在宅」という意味があります。だれもが住み慣れた家に住み続けたいものです。たとえデンマークの高齢者施設が十分な広さと快適性があるとしても、勝手も違う場所で新たな生活をはじめるのは、決して容易なことではありません。
 可能な限り在宅、とはそうした“人生の断絶”を避ける狙いがあります。在宅を支えるため、デンマークは1980年代から24時間在宅ケアがはじまりました。必要性があれば、深夜も含め、1日に10回でも訪問ケアを無料で受けることができます。
 行政側にも大きなメリットがあります。在宅ケアの量が増えたとしても、建設費、維持費、人件費などが余計にかかる施設ケアを増やすよりははるかに費用は抑えられるのです。
 また、継続性の考えは、自宅から施設へ移るときにも当てはまります。たとえば、デンマークの高齢者センター(特養に相当)では、それまでの自宅から、介護に差しさわりがない程度で、使い慣れた家具や調度品を自室にいくらでも持ち込むことが認められています。
 つまり、高齢者センターの自室とは、新たな“自宅”であり、あくまでもそれまでの生活の継続なのです。
 さらに、高齢者の施設では、廊下などに、高齢者がこれまで過ごしてきた時代のレトロな調度品を置き、落ち着く雰囲気を醸しています。回想法的手法ですが、これも継続性のひとつでもあるのです。

室内
それまでの自宅から使いなれた家具や調度品を持ちこむことができる
廊下

昔の炊事道具などを廊下に配置。高齢者に懐かしい雰囲気を醸し出している

銭本 隆行 氏
日欧文化交流学院 学院長
学校法人日本医療大学 特別講師

1968年広島市生まれ、福岡市育ち。早稲田大学卒業後、時事通信社、産経新聞社に勤務の後、2006年にデンマークへ渡る。デンマークの国民高等学校「日欧文化交流学院」にて、福祉、教育、医療に関する研修を日本から受け入れたり、講演・執筆活動をしながら、デンマークの事情を日本へ伝えている。2011年に日欧文化交流学院 学院長に就任。2013年学校法人つしま記念学園 特別講師に就任。

ページの先頭へ戻る