日本医療大学学園コラム|行政を通したサービス

日本医療大学|アンデルセン便り

03月01日

行政を通したサービス

 日本の高齢者福祉サービスは、介護保険制度に基づいて、公と民がお金を出し合い、提供主体として、民間に委託することでおおむね成り立っています。一方、デンマークでは税金にもとづいて、自治体が福祉サービスの提供主体です。民間事業者もいますが、せいぜい2、3割程度にすぎません。
 日本からみれば、「行政が主体となると非効率な運営になりかねず、税金の垂れ流しにならないか」という危惧が生じそうですが、デンマークでは、民間に類似した運営と市民のチェックの下に、民間が行うのと同じような効率的な運営を目指しています。つまり、市民が行政を通してサービスを行わせているのです。
 これについて説明しますと、まず、「民間に類似した運営」とは、行政による運営を、業績管理にもとづいたNPM(新公共管理)という手法を使って行っています。行政サービスは、そこだけ取り出せば不採算となるサービスも含まれるため、各事業に対して、単純に数値化された評価はしにくいものです。
 しかしながら、目標となにがしかの数値をあらかじめ設定し、結果(業績)を評価して次につなげることは大切なことです。結果によっては、事業は失敗だったとして、関わった職員は、公務員といえど解雇の対象になります。デンマークでは、公務員は、国、自治体という“大きな会社”に勤めている会社員、というみなされ方に過ぎません。こうして、民間に類似した運営がなされているというわけです。
 次に、市民のチェックについてです。デンマークでは、選挙の投票率がとても高いです。選挙権は18歳からで、2015年6月の国政選挙の投票率は全国平均で85.9%、2017年11月の統一地方選挙では、全国平均で70.8%でした。これに対し、日本は、2017年10月の衆院選挙で53.68%、2015年4月の統一地方選の中での市区町村議選挙で43.82%とかなり低くなっています。
 高い投票率は、政治への関心の強さのあらわれであり、中でも、市民に密着した医療福祉教育サービスについては関心は高いです。したがって、いい加減なことをしていれば、政治家は次の選挙で即座に落ちてしまいますし、行政職員も安閑としてはいられません。
 もうひとつの市民のチェック手法として、自治体に設置が義務付けられている高齢者委員会があるのですが、詳しくは次回に。

冬の湖
(提供・Adrian Lazor and Copenhagen Media Center)
コペンハーゲンの雪の街角

(提供・Morten Jenrichau and Copenhagen Media Center)

略歴
銭本 隆行 氏
学校法人日本医療大学特別講師、認知症研究所所員
1968年広島市生まれ、福岡市育ち。早稲田大学卒業後、時事通信社、産経新聞社に勤務の後、2006年にデンマークへ渡る。デンマークの国民高等学校「日欧文化交流学院」にて、福祉、教育、医療に関する研修を日本から受け入れてきた。2011年から2015年まで同校学院長を務め、現在は学校法人日本医療大学特別講師、同大学認知症研究所所員を務めている。

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