日本医療大学学園コラム|ヘンリック殿下が認知症に

日本医療大学|アンデルセン便り

10月01日

ヘンリック殿下が認知症に

 デンマークはとてもオープンな国です。単に情報公開が進んでいるというだけではなく、カーテンを閉めずに内部が外から丸見えの家が多いことからも、オープンであることへの国民全体の“自信”が伺えます。
 そんな国民性からか、王室が今年9月、大きな公表をしました。マルグレーテ2世女王の夫であるヘンリック殿下(83)が認知症を患っている、と公表したのです。以下は王室の公表文です。
 「長い経過観察と夏の終わりに実施された直近の診察の結果、王立病院の専門チームは、ヘンリック殿下が認知症を患っているとの結論に至った。診断は、殿下の認知機能レベルの低下を意味する。王立病院によると、認知機能不全の程度は、殿下の年齢に対して予想以上に大きく、行動、反応パターン、判断、感情的生活の変化を伴い、したがって外界との相互作用にも影響する可能性がある」としています。
 認知症の影響があるのかは不明ですが、ヘンリック殿下は今年8月、マルグレーテ2世女王とは一緒に葬られるのを望まない、と雑誌のインタビューで答えていました。ヘンリック殿下はインタビューで、「女王は普通の夫婦のように夫に敬意を払わず、“愚か者”扱いしてきた」とし、ロスキレ大聖堂に一緒に葬られることを望まないと表明していました。
 背景には、ヘンリック殿下は「プリンス」を意味する「殿下」の称号で、女王の配偶者を意味する「王配(デンマーク語でkongegemal)」の称号ではないことに対する根深い不満もありそうです。
 しかしながら、王室は認知症を患う以前からヘンリック殿下が、女王と一緒に葬られることは望まないと心に決めていたとしています。いずれにしても、現状のままならば同じ教会に葬られることになるとのことです。
 老いを迎えるとき、水面下に隠れていたさまざまなことが現れてくるものです。それは、仲睦まじいとされていたデンマークの女王夫妻についても同じであったようです。

ロスキレ大聖堂に並ぶ王族の棺桶。
真ん中は「建設王」と呼ばれたクリスチャン4世の棺桶。

王室が巡幸する際は、バイキング時代からの伝統か、移動手段に帆船がしばしば使われる。

略歴
銭本 隆行 氏
学校法人日本医療大学特別講師、認知症研究所所員
1968年広島市生まれ、福岡市育ち。早稲田大学卒業後、時事通信社、産経新聞社に勤務の後、2006年にデンマークへ渡る。デンマークの国民高等学校「日欧文化交流学院」にて、福祉、教育、医療に関する研修を日本から受け入れてきた。2011年から2015年まで同校学院長を務め、現在は学校法人日本医療大学特別講師、同大学認知症研究所所員を務めている。

ページの先頭へ戻る