日本医療大学学園コラム|抱えない介護3

日本医療大学|アンデルセン便り

12月01日

抱えない介護3

 移乗をより容易にするためには「摩擦抵抗を減らす」ことを前回述べましたが、そのうえで知っておかなければならないのは、どこで摩擦が生じるかです。この摩擦が生じる場所を「圧点」と言います。
 重力は対象者の身体をマットに押し付けます。その結果、摩擦が生まれ、例えばベッドの端に受動的な人を移すのを難しくさせます。この場合の移乗に必要な知識が「圧点」についてです。圧点はマットと接触する部分です。そこでの圧力は頭、肩幅、臀部、脚、かかとで最も重くなります。より重力がかかる、つまり、重い部分が摩擦抵抗が大きくなるのです。
 この知識はとても重要です。なぜならば、移乗の段階ごとにそれぞれ異なった圧点があり、その圧点での圧力を軽減できれば、移乗はより容易になるからです。たとえば、寝ているベッドから移動用ベッドに移す場合、背中と臀部の摩擦がもっとも重要となり、このポイントに正確にスライディングシートを挟めば少しの力で移動させることができます。従って、与えられた状況下で関連する圧点はどこかを分析することが大切となります。そして、スライディングシートを利用して、押す、引く、回す、という行為が移乗の中心となります。
 ここまででお判りいただけたと思いますが、圧点を考える、ということは、そもそも「抱える」という行為が前提にはないのです。
 前回までの「自然の動き」と今回の「圧点」について考えるために、「ボートの原理」がよく説明に使われます。ボートは重く、摩擦抵抗が大きくて地上では簡単に動かすことはできません。このボートを地上で動かすにはどうしますか?まず、地上とボートの底の間の圧点に、摩擦抵抗を減らすための丸太か丸い棒を入れるでしょう。そして、ボートの自然の動きに従って、押す、引く、という行為で動かすでしょう。
 このボートが移乗の対象となる患者や高齢者、障害者に該当します。このイメージを頭に描きながら移乗にあたれば、抱える必要はなくなるのです。

圧点
圧点を頭に描くことはより移乗を楽にします
ボート

“ボートの原理”は当たり前のようにみえるが移乗には大切な原理である

略歴
銭本 隆行 氏
学校法人日本医療大学特別講師、認知症研究所所員
1968年広島市生まれ、福岡市育ち。早稲田大学卒業後、時事通信社、産経新聞社に勤務の後、2006年にデンマークへ渡る。デンマークの国民高等学校「日欧文化交流学院」にて、福祉、教育、医療に関する研修を日本から受け入れてきた。2011年から2015年まで同校学院長を務め、現在は学校法人日本医療大学特別講師、同大学認知症研究所所員を務めている。

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